近しい方を亡くされたあとに迎える初めての新年は、多くの方にとって、どう過ごすべきか戸惑う時期かもしれません。
お悔やみの正月と向き合う中で、これまでのようにお祝いムードで過ごすことには抵抗があるでしょう。
この記事では、お悔やみの正月を穏やかに過ごすための具体的な知識やマナーについて、詳しく解説していきます。
例えば、喪中の過ごし方にはどのような配慮が必要なのか、周りの方々への新年の挨拶はどうすれば良いのか、といった疑問は尽きないものです。
また、年賀状のやり取りを控える代わりに送る寒中見舞いの書き方やタイミング、神社への初詣は行ってもよいのか、おせち料理やお年玉、正月飾りといった慣習にどう対応すべきかなど、具体的な悩みも多いでしょう。
特に、喪中と忌中の違いを正しく理解することは、適切な行動をとるための第一歩となります。
周りの対応に心を配りつつ、故人を静かに偲ぶ時間を大切にしたいものです。
そのようなときに、心のこもった贈り物として、例えば格式高い胡蝶蘭を選ぶことで、言葉にはできない深い弔意や敬意を伝えることもできます。
この記事を通じて、あなたが抱える不安や疑問を一つひとつ解消し、心穏やかなお悔やみの正月を過ごすための一助となれば幸いです。
- ➤お悔やみの正月に守るべき基本的なマナー
- ➤喪中と忌中の具体的な違いと期間
- ➤新年の挨拶やお祝い事を避けるべき理由
- ➤年賀状の代わりとなる寒中見舞いの適切な方法
- ➤初詣やおせち料理など正月行事への対応
- ➤周囲の人が喪中の方へ配慮すべき点
- ➤気持ちを伝える贈り物として胡蝶蘭が適している理由
お悔やみの正月に控えるべきことと基本マナー
- ➤まずは「喪中」と「忌中」の違いを理解する
- ➤新年の挨拶は「おめでとう」を避けるのが無難
- ➤年賀状の代わりに寒中見舞いを送る時期と方法
- ➤鏡餅などの正月飾りは避けるべきか
- ➤おせち料理などお祝いの食事に関する考え方
まずは「喪中」と「忌中」の違いを理解する
お悔やみの正月を過ごすにあたり、最初に理解しておくべき重要な概念が「喪中」と「忌中」の違いです。
これらは似ているようでいて、意味合いや過ごし方が大きく異なります。
故人を偲び、心を静かに保つために、これらの期間の違いを正確に把握しておくことが大切です。
まず「忌中」ですが、これは故人が亡くなってから四十九日の法要まで、または神道では五十日祭までの期間を指します。
この期間は、死の「穢れ」が近しい者に及んでいると考えられており、遺族は外部との接触を極力避け、身を慎んで故人の冥福を祈ることに専念します。
したがって、忌中には結婚式や祝賀会といったお祝い事への出席はもちろんのこと、神社への参拝も控えるのが一般的です。
神道では死を穢れと捉えるため、神様の領域である神社に穢れを持ち込むべきではない、とされているからです。
一方で「喪中」は、故人を偲び、悲しみを乗り越えるためのもう少し長い期間を指し、一般的には故人が亡くなってから一年間とされています。
これは近親者が亡くなった際に、お祝い事を避けて静かに過ごす期間です。
忌中が「穢れ」を清めるための期間であるのに対し、喪中は社会的な慣習として、遺族が悲しみを癒すための時間と位置づけられています。
喪中の期間には、忌中ほど厳格な制約はありませんが、新年の祝賀、年賀状の送付、派手な宴会への参加などは控えるのがマナーとされています。
これらの違いを分かりやすく表にまとめます。
項目 | 忌中(きちゅう) | 喪中(もちゅう) |
---|---|---|
期間 | 故人の命日から仏式で49日間、神式で50日間 | 故人の命日から約1年間 |
意味合い | 死の穢れを清め、故人の冥福を祈る期間 | 故人を偲び、悲しみを癒す期間 |
控えるべきこと | 結婚式、祝賀会への参加、神社への参拝、飲み会など | 年賀状の送付、新年の挨拶、正月飾り、派手な宴会など |
故人との関係 | 主に2親等以内の親族 | 主に2親等以内の親族 |
このように、忌中と喪中では過ごし方の基本が異なります。
お悔やみの正月がどちらの期間にあたるかによって、行動の指針も変わってきます。
特に、四十九日を終えていない忌中の場合は、より一層慎んだ生活を心がける必要があります。
喪中期間は、故人との思い出を静かに振り返り、心の整理をつけるための大切な時間です。
無理に普段通りに振る舞う必要はなく、ご自身の気持ちに正直に、穏やかな時間を過ごすことを最優先に考えてください。
新年の挨拶は「おめでとう」を避けるのが無難
お悔やみの正月を迎える際、多くの人が悩むのが新年の挨拶でしょう。
普段であれば「あけましておめでとうございます」と交わす言葉も、喪中の状況では使うべきではありません。
なぜなら、「おめでとう」という言葉には「お祝いを申し上げる」という意味が含まれており、身内に不幸があった年には相応しくないからです。
これは、故人への哀悼の意を示すとともに、ご自身の悲しみの気持ちに配慮する上でも重要なマナーです。
では、代わりにどのような言葉を使えば良いのでしょうか。
最も一般的で無難な挨拶は、「昨年はお世話になりました」「本年もどうぞよろしくお願いいたします」といった、お祝いの言葉を含まない表現です。
これにより、相手への感謝と新年の変わらぬお付き合いをお願いする気持ちを伝えることができます。
もし相手があなたの状況を知らない可能性がある場合は、「昨年は何かとお世話になり、ありがとうございました。本年も変わらぬお付き合いをよろしくお願いいたします」のように、少し丁寧な表現を心がけると良いでしょう。
逆に、相手が喪中であることを知っている上で挨拶を交わす場合は、相手の気持ちを気遣う言葉を添えることも考えられます。
例えば、「大変でしたね。くれぐれもご無理なさらないでください」といった言葉は、相手への思いやりを示すものとなります。
職場や取引先など、公の場での挨拶も同様です。
仕事始めの朝礼などで全体の挨拶がある場合でも、個人的に話す際には「本年もよろしくお願いいたします」という言葉に留めておくのが賢明です。
こちらが喪中であることを事前に伝えているのであれば、相手も理解してくれるはずです。
重要なのは、お祝いの言葉を使わないことで、故人を偲び、静かに新年を迎えたいという気持ちを表現することです。
無理に明るく振る舞う必要はありませんし、挨拶をすること自体が辛い場合は、無理に行う必要もありません。
お悔やみの正月においては、形式よりもご自身の気持ちを大切にすることが何よりも優先されます。
もし言葉に迷うようなら、静かにお辞儀をするだけでも、あなたの気持ちは十分に伝わるものです。
周囲の人々も、あなたの状況を理解し、温かく見守ってくれるでしょう。
年賀状の代わりに寒中見舞いを送る時期と方法
お悔やみの正月において、年賀状のやり取りは控えるのが基本的なマナーです。
年賀状は新年を祝うための挨拶状であり、喪中の際には送る側も受け取る側も避けるべきとされています。
では、年賀状の代わりにどのように挨拶を伝えれば良いのでしょうか。
その答えが「寒中見舞い」です。
寒中見舞いは、一年で最も寒さが厳しい時期に、相手の健康を気遣って送る季節の挨拶状です。
年賀状とは異なり、お祝いの意味合いを含まないため、喪中の際の挨拶状として広く用いられています。
寒中見舞いを出すタイミング
寒中見舞いを送る時期には決まりがあります。
一般的には、松の内(1月1日~1月7日、地域によっては15日まで)が明けてから、立春(2月4日頃)までの間に送るのがマナーです。
松の内は新年のお祝いの期間であるため、この期間は避けるようにしましょう。
1月8日頃から2月3日頃までに相手に届くように準備を進めると良いでしょう。
寒中見舞いの内容と書き方
寒中見舞いには、いくつかの役割があります。
一つは、喪中であることを知らずに年賀状をくださった方への返礼です。
もう一つは、こちらが喪中であるため年賀状での挨拶を控えさせていただいたことを、毎年年賀状を交換している方へお知らせする役割です。
文面には、以下の要素を盛り込むのが一般的です。
- 季節の挨拶(「寒中お見舞い申し上げます」など)
- 年賀状をいただいたことへのお礼(いただいた場合)
- 喪中であったため、年賀のご挨拶を差し控えた旨のお詫び
- 故人の情報(誰が、いつ亡くなったかなど)
- 相手の健康を気遣う言葉
- 結びの言葉と日付、差出人名
寒中見舞いを書く際の注意点として、はがきは通常の官製はがきや、落ち着いたデザインの私製はがきを使用します。
年賀はがきを使ってはいけません。
また、句読点(「、」や「。」)は使わずに書くのが伝統的なマナーとされていますが、現代では読みやすさを優先して使用しても問題ありません。
以下に具体的な文例を挙げます。
【年賀状をいただいた方への返信例】
寒中お見舞い申し上げます
ご丁寧な年始のご挨拶をいただきありがとうございました
昨年(月)に(故人の続柄)○○が永眠いたしましたため
年末年始のご挨拶を控えさせていただきました
ご連絡が遅くなりましたことをお詫び申し上げます
寒い日が続きますのでどうぞご自愛ください
【こちらから先に送る場合の例】
寒中お見舞い申し上げます
皆様にはお健やかにお過ごしのこととお慶び申し上げます
昨年(月)に(故人の続柄)○○が永眠いたしましたので
年始のご挨拶はご遠慮させていただきました
本年も変わらぬお付き合いのほどよろしくお願い申し上げます
このように、寒中見舞いを活用することで、お祝いの言葉を避けつつも、日頃お世話になっている方々へ丁寧に挨拶を伝えることができます。
お悔やみの正月を過ごす上で、非常に大切なコミュニケーションの一つと言えるでしょう。
鏡餅などの正月飾りは避けるべきか
新年を迎えると、多くの家庭では門松やしめ縄、鏡餅といった正月飾りを飾ります。
これらは歳神様(としがみさま)という新年の神様を家庭に迎え入れ、一年の豊作や家族の健康を祈願するための、非常におめでたい縁起物です。
しかし、お悔やみの正月を迎える家庭では、これらの正月飾りは飾るべきではありません。
その理由は、正月飾りが持つ「お祝い」の意味合いにあります。
喪中は、故人を偲び、静かに過ごす期間です。
この期間に、神様を迎えて新年を祝うための飾り付けを行うことは、故人への哀悼の意に反すると考えられています。
これは、ご自身の気持ちの整理をつける上でも、また社会的なマナーとしても重要な配慮です。
具体的に避けるべき正月飾りには、以下のようなものがあります。
- 門松:家の門の前に立てる松の飾り。歳神様が迷わず家に来るための目印とされています。
- しめ縄・しめ飾り:神聖な場所を示す縄。不浄なものが家の中に入らないようにする結界の役割があります。
- 鏡餅:歳神様へのお供え物。神様の力が宿るとされ、家族の健康や繁栄を祈願します。
- 破魔矢・熊手:縁起物として神社やお寺で授与されるもの。
これらの飾りは、すべて新年のお祝いに関連するものですので、喪中の家庭では飾らないのが一般的です。
玄関や神棚、床の間など、普段飾り付けをしている場所も、喪中には何もしない状態にしておきましょう。
もし、喪中であることを知らずに誰かが正月飾りを贈ってくれた場合は、丁重にお断りするか、受け取ったとしても飾らずにしまっておくのが良いでしょう。
その際、相手に喪中であることを伝え、お心遣いに感謝の意を示すことが大切です。
ただし、家庭によっては、故人が生前に楽しみにしていた飾りなどを、お祝いとしてではなく故人を偲ぶために飾りたい、と考える場合もあるかもしれません。
厳格なルールがあるわけではなく、最終的には遺された家族の気持ちが最も重要です。
しかし、一般的なマナーとしては、お祝い事を避けるという観点から、正月飾りは控えるのが無難な対応と言えます。
お悔やみの正月は、華やかな飾り付けで新年を祝うのではなく、静かな環境で故人との思い出を大切にし、心穏やかに過ごすことを心がけましょう。
おせち料理などお祝いの食事に関する考え方
お正月といえば、家族や親戚で囲むおせち料理も楽しみの一つです。
しかし、おせち料理は、一つひとつの料理に五穀豊穣、子孫繁栄、不老長寿といった願いが込められた、新年を祝うための「祝い肴」です。
そのため、お悔やみの正月においては、おせち料理を食べることは控えるのが一般的です。
これは、正月飾りを飾らないのと同じ理由で、お祝い事を避けるという喪中の基本的な考え方に基づいています。
特に、紅白のかまぼこや数の子、伊達巻、昆布巻きといった、おめでたい意味合いの強い料理は避けるべきとされています。
また、お屠蘇(おとそ)や祝い箸の使用も、新年を祝う行為にあたるため、控えるのがマナーです。
では、喪中の正月にはどのような食事をすれば良いのでしょうか。
お祝い膳でなければ、普段通りの食事をしても問題ありません。
家族が集まる機会であれば、故人が好きだった料理を作って偲ぶ、というのも一つの過ごし方です。
大切なのは、お祝いムードを避け、静かに故人を思う気持ちです。
もし、親戚の集まりなどで、おせち料理が振る舞われる場に参加しなければならない場合はどうすれば良いでしょうか。
その場合は、無理に場を白けさせる必要はありませんが、おめでたい意味合いの強い料理は避けるように箸をつけるのが無難です。
事前に、喪中であるためお祝いの席は辞退したい旨を伝えておくのも良いでしょう。
現代では、ライフスタイルも多様化しており、あまり厳格に考えすぎなくても良いという風潮もあります。
例えば、おせち料理の中でも、煮物など比較的お祝いの意味合いが薄いものを選んで食べる、といった柔軟な対応も考えられます。
最も重要なのは、遺された家族が故人を偲び、穏やかな気持ちで過ごせるかどうかです。
世間体を気にしすぎるあまり、心が疲弊してしまっては本末転倒です。
家族でよく話し合い、自分たちにとって最も心地よい過ごし方を見つけることが、故人への一番の供養になるのではないでしょうか。
お悔やみの正月においては、食事の形式にこだわるよりも、故人との思い出を語り合いながら、静かで心温まる食卓を囲むことを大切にしてください。
穏やかなお悔やみの正月の過ごし方に関するQ&A
- ➤神社への初詣は忌明け後が望ましい
- ➤子どもへのお年玉は「お小遣い」として渡す
- ➤周りの人は故人を偲ぶ気持ちに配慮した対応を
- ➤贈り物として気持ちを伝える胡蝶蘭という選択
- ➤故人を静かに偲ぶお悔やみの正月を過ごすために
神社への初詣は忌明け後が望ましい
新年の恒例行事である初詣ですが、お悔やみの正月を迎える際には、その判断に迷う方も少なくありません。
初詣に関しては、特に「忌中」であるか「喪中」であるかによって、考え方が大きく異なります。
結論から言うと、神社への初詣は、少なくとも忌中(故人が亡くなってから49日または50日)は避けるべきです。
これは、神道において死が「穢れ(けがれ)」として扱われるためです。
穢れとは、不浄なものや罪深いものという意味ではなく、気(生命力)が枯れた状態、つまり「気枯れ」を指します。
近親者を亡くした遺族は、この穢れの状態にあると考えられており、神聖な場所である神社の境内(鳥居の内側)に立ち入ることは、神様に対して失礼にあたるとされています。
そのため、四十九日の法要が終わるまでは、神社への参拝は控えるのが古くからの習わしです。
では、忌明け後の喪中期間(故人が亡くなってから約1年間)はどうでしょうか。
忌明け後は、穢れが祓われたと見なされるため、神社に参拝すること自体は問題ないとされています。
しかし、初詣は新年を「お祝い」し、一年の幸せを祈願する行事です。
故人を偲び、静かに過ごすべき喪中の期間に、お祝い事である初詣に行くことに抵抗を感じる方も多いでしょう。
そのため、喪中の初詣については、必ずしも禁止されているわけではありませんが、ご自身の気持ちに従って判断するのが最も良いでしょう。
もし参拝する場合でも、派手な振る舞いは避け、静かにお参りすることを心がけてください。
一方で、お寺への初詣(初詣で)については、考え方が異なります。
仏教では、死を穢れとは捉えません。
むしろ、仏様は死者の魂を救い、極楽浄土へと導いてくれる存在と考えられています。
そのため、忌中や喪中であっても、お寺に参拝することに何の問題もありません。
故人の冥福を祈るために、菩提寺(ぼだいじ)や縁のあるお寺にお参りするのは、非常に理にかなった行動と言えます。
お悔やみの正月にどうしても手を合わせる場所が欲しいと感じるなら、神社ではなくお寺を選ぶというのも一つの選択肢です。
最終的には、宗教的な教義だけでなく、ご自身やご家族がどのような気持ちで新年を迎えたいかが大切です。
無理に行く必要はありませんし、家で静かに故人を偲ぶ時間を持つことも、立派な新年の迎え方です。
子どもへのお年玉は「お小遣い」として渡す
お正月の子どもたちにとって最大の楽しみといえば、お年玉でしょう。
しかし、「お年玉」もまた、新年を祝う意味合いが強い習慣です。
「年玉」という言葉は、歳神様からいただく魂(=力)という意味があり、これが由来とされています。
そのため、お悔やみの正月においては、お祝い事であるお年玉をあげるべきか、悩ましい問題となります。
この問題に対する一般的な考え方は、「お年玉」という名目を避けて渡す、というものです。
子どもたちの楽しみを完全に奪ってしまうのは忍びない、と考える方が多いため、祝いの意味合いをなくす工夫がなされます。
具体的には、お年玉袋の表書きを「お年玉」や「御年賀」とするのではなく、「お小遣い」や「書籍代」「文具代」といった別の名目に変えて渡します。
こうすることで、新年のお祝いではなく、あくまで日常的な金銭の授受という形を取ることができます。
ポチ袋も、おめでたい絵柄(鶴亀、松竹梅、その年の干支など)が描かれたものは避け、無地や落ち着いたデザインのものを選ぶのが望ましいでしょう。
渡す側も、もらう側も、喪中であることを理解した上でのやり取りとなります。
もし、親戚の子どもたちにお金を渡す機会がある場合は、その子どもの親に事前に相談してみるのも良い方法です。
「喪中なのでお年玉という形は控えますが、お小遣いとして渡してもよろしいでしょうか」と一言断りを入れることで、相手への配慮を示すことができます。
多くの場合、相手もこちらの状況を理解し、快く受け入れてくれるはずです。
重要なのは、お祝いの気持ちではなく、子どもを思う気持ちとして渡すという点です。
喪中であっても、子どもたちの笑顔が見たいという気持ちは自然なものです。
形式にこだわりすぎるのではなく、状況に応じて柔軟に対応することが、お悔やみの正月を穏やかに過ごすための知恵と言えるでしょう。
ただし、家庭の方針や地域の慣習によっては、喪中の一年間は一切金品のやり取りをしない、と決めている場合もあります。
その場合は、その方針に従うのが最も良い選択です。
いずれにしても、家族や親戚とよく話し合い、皆が納得できる方法を見つけることが大切です。
周りの人は故人を偲ぶ気持ちに配慮した対応を
これまで、喪中にある当事者が気をつけるべきマナーについて述べてきました。
しかし、お悔やみの正月においては、その周りにいる人々の配慮も非常に重要になります。
もし、あなたの友人や同僚、親戚が喪中である場合、どのような対応を心がければ良いのでしょうか。
最も大切なのは、相手が故人を偲び、静かに過ごしたいという気持ちを尊重することです。
新年の挨拶とお祝いの言葉
まず、喪中の方に対して「あけましておめでとうございます」という挨拶は絶対に避けましょう。
これは、相手の悲しみを無視する無神経な行為と受け取られかねません。
代わりに、「昨年はお世話になりました。本年もよろしくお願いします」といった、お祝いの意味を含まない挨拶をするのが適切です。
また、相手の体調や心を気遣う「寒い日が続きますが、どうぞご自愛ください」といった一言を添えると、より温かい気持ちが伝わるでしょう。
年賀状を送らない
相手が喪中であることを知っている場合は、年賀状を送ってはいけません。
事前に喪中はがきを受け取っている場合はもちろん、人づてに聞いた場合でも同様です。
もし、年賀状の準備をした後に喪中であることを知った場合は、その年賀状は送らずに保管しておきましょう。
どうしても挨拶を伝えたい場合は、松の内が明けてから、寒中見舞いを送るのがマナーです。
その際も、お祝いの言葉は避け、相手を気遣う内容を心がけてください。
正月行事への誘いを控える
新年会や初詣、カウントダウンイベントなど、お祝いムードの強い行事への誘いは控えるべきです。
「気分転換に」という善意からの誘いであっても、喪中の方にとっては負担になることがあります。
もし、何か声をかけたいのであれば、「落ち着いたら、またゆっくりお茶でもしましょう」といった、時期をずらした提案の方が、相手への配慮が感じられます。
何よりも、相手の話を静かに聞いてあげることが、大きな支えになることもあります。
無理に元気づけようとするのではなく、相手が故人の思い出を語りたそうにしていれば、それに耳を傾ける。
そっとしておいてほしそうであれば、静かに見守る。
相手の気持ちに寄り添い、過度な干渉をしないことが、周りの人にできる最大のサポートと言えるかもしれません。
お悔やみの正月を過ごしている方は、精神的にも肉体的にも疲れやすい状態にあります。
その繊細な心情を理解し、思いやりのある行動を心がけることが大切です。
贈り物として気持ちを伝える胡蝶蘭という選択
お悔やみの正月を迎える方へ、何か気持ちを伝えたいけれど、どのような贈り物が適切か悩むことがあるでしょう。
お歳暮やお年賀といった季節の贈り物は、お祝いの意味合いが強いため避けるべきです。
そのような状況で、静かな哀悼の意と敬意を伝えるのにふさわしい贈り物として、胡蝶蘭が選ばれることがあります。
なぜ、胡蝶蘭がお悔やみのシーンに適しているのでしょうか。
1. 格式高く、敬意を表す花
胡蝶蘭は、その優雅で気品のある佇まいから、お祝い事だけでなく、法事や追悼の場でも用いられる格式高い花です。
派手さはありませんが、凛としたその姿は、故人への深い敬意と、遺族への静かな慰めの気持ちを表現するのに最適です。
特に、白い胡蝶蘭は「純粋」「清純」といった花言葉を持ち、清らかな哀悼の意を伝えるのにふさわしいとされています。
2. 香りや花粉が少なく、負担をかけない
お悔やみの場では、香りの強い花は避けられる傾向にあります。
胡蝶蘭は香りがほとんどなく、花粉も少ないため、飾る場所を選びません。
ご遺族の自宅や、場合によっては後飾り祭壇のそばに飾っていただく際にも、アレルギーの心配などが少なく、安心して贈ることができます。
これは、相手への細やかな配慮を示すことにも繋がります。
3. 長く咲き続け、故人を偲ぶ時間に寄り添う
胡蝶蘭は生命力が強く、適切な環境であれば1ヶ月以上も美しい花を咲かせ続けます。
すぐに枯れてしまう花とは異なり、長く咲き続けるその姿は、故人を偲ぶご遺族の心に静かに寄り添ってくれます。
慌ただしい年末年始が過ぎ、少し落ち着いた頃にも、その美しい花が咲いていることで、贈り主の温かい気持ちが長く伝わることでしょう。
胡蝶蘭を贈る際は、「御供」や「お供え」といった表書きは使わず、あえて何も書かないか、メッセージカードを添えるのが良いでしょう。
カードには、「心ばかりのお花ですが、どうぞお供えください。ご無理なさらないでくださいね」といった、相手を気遣う言葉を添えると、より気持ちが伝わります。
お悔やみの正月という、非常にデリケートな時期だからこそ、言葉だけでは伝えきれない深い思いを、品格のある胡蝶蘭に託してみてはいかがでしょうか。
それはきっと、悲しみの中にいるご遺族の心を、そっと温める一助となるはずです。
故人を静かに偲ぶお悔やみの正月を過ごすために
この記事では、お悔やみの正月の過ごし方について、さまざまな角度から解説してきました。
喪中や忌中の意味から、挨拶や年賀状、正月行事への対応、そして周りの人々の配慮に至るまで、多くの決まり事やマナーが存在します。
しかし、これらの知識やマナーは、あくまで故人を偲び、遺された人々が心穏やかに過ごすための指針にすぎません。
最も大切なことは、形式に縛られることではなく、ご自身やご家族が故人を思う気持ちです。
お悔やみの正月は、決して「何もしてはいけない」期間ではありません。
むしろ、普段の喧騒から離れ、故人との思い出を静かに振り返り、家族との絆を再確認するための貴重な時間と捉えることもできます。
例えば、家族で故人の好きだった場所を訪れたり、アルバムを囲んで思い出話をしたりするのも、素晴らしい過ごし方です。
故人が大切にしていたものを受け継ぎ、手入れをすることも、故人への供養となるでしょう。
無理に普段通りに振る舞う必要も、無理に悲しみに沈み続ける必要もありません。
泣きたいときには泣き、笑いたいときには微笑む。
ご自身の心の声に正直に耳を傾け、心と体を休めることを最優先に考えてください。
周りの人々も、あなたのその気持ちをきっと理解してくれるはずです。
お悔やみの正月という特別な時間を、故人への感謝と愛情を再確認する機会とすることで、新たな一年を歩み出すための静かな力を得ることができるのではないでしょうか。
この記事が、あなたが心穏やかな年末年始を過ごすための一助となれば、これに勝る喜びはありません。
- ➤お悔やみの正月は故人を偲び静かに過ごす期間
- ➤忌中は故人の死後49日間で特に身を慎むべき
- ➤喪中は故人の死後約1年間でお祝い事を避ける
- ➤新年の挨拶で「おめでとう」は使わない
- ➤挨拶は「本年もよろしくお願いします」などが適切
- ➤年賀状の送付や受け取りは控えるのがマナー
- ➤年賀状の代わりには寒中見舞いを送る
- ➤寒中見舞いは松の内が明けてから立春までに送付
- ➤門松や鏡餅などの正月飾りは飾らない
- ➤おせち料理やお屠蘇などお祝いの食事も避ける
- ➤神社への初詣は忌明け後であれば問題ないが慎重に
- ➤お寺への参拝は忌中や喪中でも問題ない
- ➤お年玉は「お小遣い」など名目を変えて渡す
- ➤周りの人は喪中の方へのお祝いの言葉や誘いを控える
- ➤お悔やみの気持ちを伝える贈り物として胡蝶蘭は最適